fbpx

親の雑誌ブログ

認知症ドキュメンタリー映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」

カテゴリー:ブログ

投稿日:2019年02月04日(最終更新:2021年04月09)

自分史作成サービス「親の雑誌」では、これまで650名を超える人生の大先輩たちにお話を聞いてきました。その中には、認知症の初期段階の方や施設で療養生活を送っている方もいらっしゃいます。

認知症の親に、子はどう向き合えばいいのか

お客様から自分史作成のご相談を受ける中で、「親が認知症かもしれない」「親の認知症の症状が進んできた」というお話もしばしばお聞きします。その中で、私たちスタッフは、親御さんの認知症に向き合いながら介護にあたるお子さんやご家族の気持ちについても、より深く知りたいと思うようになりました。

そこで当社では、メンバーが認知症や介護に関連する本や映画を紹介し合い、感想や学んだことを語り合うことで、より豊かな知識と心でお客様に関われるよう日々努めております。

今回は、その中から映画「ぼけますから、よろしくお願いします。」をご紹介します。

認知症の映画の画像
※写真は公式サイトより

認知症の母、介護する父、撮影する娘の愛にあふれた共同作品

「ぼけますから、よろしくお願いします。」は、映像ディレクター・信友直子氏の劇場公開映画初監督作品です。信友監督は、1961年広島県呉市生まれ。1984年に東京大学文学部卒業後、1986年から映像制作に携わり、フジテレビ「NONFIX」や「ザ・ノンフィクション」で数多くのドキュメンタリー番組を手掛けてきました。自らの乳がん体験を描いた「ザ・ノンフィクション おっぱいと東京タワー〜私の乳がん日記」でニューヨークフェスティバル銀賞・ギャラクシー賞奨励賞を受賞したほか、北朝鮮拉致問題・ひきこもり・若年性認知症・ネットカフェ難民などの社会的なテーマも幅広く取り上げています。「ぼけますから、よろしくお願いします。」は監督のご両親を描いた作品で、認知症の母親と耳の遠い父親、老夫婦2人の様子を自らカメラを回して記録したドキュメンタリー映画です。

信友監督は、大学進学のため18歳で上京して以来40年近く東京暮らし。呉市に暮らす両親は、独身で仕事に打ち込むひとり娘を遠くから静かに見守ってきました。信友監督が45歳のときに乳がんが見つかり、病に落ち込む娘をお母さんはユーモアあふれる愛情で支えたといいます。母の支えのおかげで人生最大の危機を乗り越えた信友監督は、両親への恩返しと思い出づくりのため、父と母の記録を撮り始めたのです。

撮影を重ねる中で、信友監督は母の変化を感じるようになります。母はアルツハイマー型認知症と診断され、そこから90歳を超えた父が80代後半の母を介護する日々が始まったのでした。ドキュメンタリー制作の仕事を辞めて実家に帰るべきか悩んだ信友監督ですが、記録を撮り続けることが自分の使命と感じて、時につらい気持ちを抱えながらもカメラ越しに両親を見守りました。2人の姿をありのままに撮り続けた日々は、約1200日に及んだそうです。

認知症の映画の出演者※写真は公式サイトより

私も劇場に足を運びましたが、認知症の老々介護というシビアな現実が目の前に映し出されているにも関わらず、見終わって強く心に残ったのは愛情を持って支え合うご両親の姿でした。上映中はたくさん泣きましたが、映画館を出たあとは不思議とすがすがしく優しい気持ちで帰路につきました。

「ぼけますから、よろしくお願いします。」は現在も全国各地で上映中です。いずれくる親の老いへの向き合い方を考えている方、認知症の親御さんを介護中の方など、多くの方に見ていただきたい作品です。

・「ぼけますから、よろしくお願いします。」公式サイト
全国の劇場情報
Facebookページ

「よろしくお願いします」と言い合える夫婦、親子関係を

親の老いは避けて通れないものであり、親の記憶力や体力が落ちていく様子を見守るのは子どもにとっては時につらいものです。自分史作成サービス「親の雑誌」では、親御さんがお元気なうちはもちろん、お耳が遠くなっておられたり認知症の症状が見られたりする場合にも、ご家族のお力も借りながら可能な限り自分史作成のお手伝いをしております。

日常生活での記憶はあいまいになってしまう親御さんが、「親の雑誌」の取材では幼少時代の思い出や初めてわが子を抱いたときの気持ちを生き生きと語ってくださり、取材に同席されたご家族が驚かれることも多くあります。

こうした親御さんがよく口にされるのが、「子どもに面倒をかけるのは申し訳ないと思っているけど、子や孫が自分のことを気にかけて手助けしてくれてありがたい。今は本当に幸せです」といったお気持ちです。

若いうちは「子どもの世話にはなりたくない」と思っていても、年齢を重ね体力が低下するとやはり周囲のサポートが必要になります。そんなときに「よろしくね」と言い合える夫婦であり親子になれたら素敵だなと、「親の雑誌」の制作をしながら日々感じています。

自分史作成サービス「親の雑誌」は、写真選びや年表作成、取材といった制作工程でも親子の時間を楽しんでいただきたいと願っています。日頃なかなか口にできない「よろしくね」「ありがとう」の気持ちも、自分史の作成を通じて伝え合うことができるかもしれません。

親の雑誌副編集長 長経子

自分史副編集長の写真