親世代は「恵方巻」を知っているか?
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投稿日:2019年01月31日(最終更新:2021年04月09)
自分史作成サービス「親の雑誌」では、これまで全国各地の650名を超える人生の大先輩たちにお話を聞いてきました。ご自宅にうかがってのインタビューではお正月や季節の行事についてお聞きすることも多く、日本各地の多様な文化に触れるのも取材の楽しみの1つとなっています。
節分にはどんな親子の思い出がありますか?
明日から2月ですが、2月といえば節分。2019年の節分は2月3日(日)です。
節分とは「季節を分ける」、すなわち季節の変わり目ということ。立春、立夏、立秋、立冬が各季節の始まりであり、それぞれの前日が節分と呼ばれています。中でも立春は、旧暦においては一年の始まりとされており、その前日となる節分が今の時代の大晦日の位置づけとして重要視されていたようです。新しい年が始まる前に鬼(邪気)を払い、不幸や災いのない一年になるようにとの願いを込めて行われるのが節分の行事というわけです。
節分といえば「鬼は~そと、福は~うち」の豆まきですが、お面をかぶったお父さんが鬼役に扮して子どもたちが豆を投げて鬼退治、というのが子どもの頃の思い出という方も多いのではないでしょうか。
豆まきは、その昔京都に鬼が出たときに炒った大豆を使い鬼を追い払ったことが由来となっているそうで、炒り大豆を使うのはこのためのようです。北海道などでは落花生を使うこともあるようですね。私の育った地域では数え年の数だけ豆を食べるという風習があり、炒った大豆が苦手だった私は食べるのに苦労した記憶があります。
また、節分といえばイワシ、という地域もあるようです。イワシを焼いたときの臭いを鬼が嫌うとされたことから、鬼を寄せ付けないという意味があるようです。西日本には「柊鰯(ひいらぎいわし)」といって、ヒイラギの小枝に焼いたイワシの頭を刺して玄関に飾るという風習もあります。ヒイラギの葉っぱにはトゲが多く、トゲに触ると痛い。このヒイラギの枝に焼いたイワシの頭を刺して玄関先に飾ることで、ヒイラギのトゲが鬼の目を刺して家の中に入れないようにする、さらに焼いたイワシの臭いで鬼を近づかせない、ということのようです。以前節分の時期に関西のお宅に取材でうかがった折に実物を見たことがありますが、ヒイラギのトゲは本当に痛くて、確かに鬼が逃げていきそうだと思いました。トゲだらけのヒイラギの枝にイワシの頭が刺さっている図もなかなかに怖くて、鬼は見ただけで逃げていきそうでした。
家族の健康と幸せを願って、春を迎える
そして、近年節分の時期に全国的に話題となるのが恵方巻。当社でも、関西出身のスタッフは子どもの頃から節分に太巻きを食べていたそうですが、それ以外の地方では昔からの風習ではなかったようです。
節分に太巻きを食べる由来は諸説あり、幕末から明治時代初頭に大阪・船場で商売繁盛、無病息災、家内円満を願ったのが始まりという説などがあるようですが定かではないようです。この節分の太巻き・恵方巻の存在を歴史の中に探してみると、以下のような記載が見当たります。
・昭和7(1932)年:大阪鮓商組合が寿司の販売促進の目的で「巻壽司と福の神 節分の日に丸かぶり」というチラシを配布
・昭和15(1940)年:大阪鮓商組合後援会が「幸運巻寿司 節分の日に丸かぶり」というチラシを配布
・昭和24(1949)年:土用の丑の日に鰻に対抗して、大阪鮓商組合が戦前に行われていた「節分の丸かぶり寿司」広告の復活を画策
・昭和48(1973)年:大阪海苔問屋協同組合が海苔の販売促進のために作成した、海苔を使用する太巻き「幸運巻ずし」のポスターを寿司屋が共同で店頭に貼り出して販促キャンペーンを展開
・昭和49(1974)年:大阪の海苔店経営者らが「巻き寿司早食い競争」を節分のイベントで開始
・昭和52(1977)年:大阪海苔問屋協同組合が道頓堀で行った巻き寿司早食い競争イベントがマスコミに取り上げられ、関西厚焼工業組合もこの時期に宣伝活動を開始
・平成10(1998)年:セブンイレブンが全国の店舗で「恵方巻」として取り扱いを開始
ということで、西日本が発祥と思われる「節分に太巻き寿司を食べよう」というキャンペーンが、セブンイレブンによって「恵方巻」として認知されていったようです。
当社の関西出身スタッフによると、節分の夜に家族で太巻き寿司を食べるときは「その年の恵方を向いて、願い事をしながら笑わずに黙って食べる。神様との縁が切れるから、太巻き寿司は切らない」のだそうです。太巻き寿司を丸ごと食べるのはお行儀がよくないと思う方もいるでしょうが、このスタッフの家では、親も子も、その年の健康と幸運を願って黙々と太巻き寿司を食べたそうです。
みなさんも、子どもの頃の節分の記憶をたどりながら、親御さんの子ども時代の節分の思い出話を聞いてみてはいかがでしょうか。
親の思い出、家族の歴史を自分史で形に
自分史作成サービス「親の雑誌」では、親御さんの幼少期からの人生の歩みを時間をかけて聞き取り、インタビュー形式の原稿にまとめます。幼い頃のなにげない思い出話も、誌面で読み返すとその方ならではの温かみがあり、当時に歴史的な価値も感じます。
親御さんの生い立ちを雑誌の形にすることは、後世に歴史を残すことにもつながります。自分史作成サービス「親の雑誌」では、思い出の写真と親御さんのお話をもとに、家族の思い出の1冊をお作りしています。
親の雑誌編集長 井戸洋希