自分史作成サービス「親の雑誌」 新旧/編集長対談
カテゴリー:ブログ
投稿日:2018年12月25日(最終更新:2021年04月09)
「親の雑誌(自分史)を作ることを文化にしたい」
自分史作成サービス「親の雑誌」では、2015年5月のサービス開始以来600人を超える親御様の人生を雑誌という形にまとめてきました。今回は、この事業を立ち上げた初代編集長・早川と、このたび2代目編集長に就任した井戸が、それぞれの目線で「親の雑誌」への思いを語ります。
■自分史作成サービス「親の雑誌」誕生のきっかけ
:早川
2013年6月にこころみがスタートして、会話型見守りサービスを始めました。お子さんが申し込んで、こころみのスタッフが親御さんに電話して、日々の生活の様子や若き日の思い出などを自由にお話しいただくサービスです。会話の内容は、メールでお子さんに報告しています。体の不調や生活への不安など、親子だと遠慮して言いにくいことも他人だと話しやすいようで、メールレポートがきっかけで「親子の会話が増えた」、「親の異変を早期に発見できた」といった評価の声をいただいていました。
そうした声の中には、「親が若いときにこんなことしてたなんて全く知らなかった」「戦争を体験したとは聞いてたけど、その先の深い話があったんだ。もっとちゃんと聞いておけばよかった」といったものも多く、私たちは驚きました。日々の様子を知ってもらうために始めたサービスでしたが、親御さんは生きざまや人生観についても語られて、ご家族が聞いたことのない話も多かったのです。これは大きな発見でした。また、人生の先輩たちの体験談や人生観には他人である私たちも学ぶところが多く、「このままにしておくのはもったいない」と思うようにもなりました。
あるときお客さまから「メールレポートをファイルにして、家族で共有しています」と言われました。このとき社内で、「やはりお話を聞くだけではもったいない。何か新たなサービスとして形にできないか」と議論になりました。これが「親の雑誌」誕生のきっかけです。会話型見守りサービスでは電話で聞いたお話を文字に起こしてメールで送っていましたから、それをものとして残そうというのが原点です。電話は定期的にかけていたので、当初は「月刊誌」として冊子にしようと考えました。自分史ではなくあえて雑誌とした理由の1つがこれです。高価でページ数も多く正直誰も読まないような分厚い自分史よりも、手軽に読めていつでも手に取ってもらえるように、あえて雑誌というスタイルにしたいという思いもありました。
半年ほどかけてサービスの構想を練りプロトタイプを作って、お客さまのところに試作版を持って行ったときのことです。お客さまは、雑誌を手にしたまま数分間、何も言わずに見ているんです。そして、「出来上がったものを見たら衝撃を受けた!」と言ってくださいました。その瞬間に、社長の神山ともども「これはいける!」と確信を持ちました。サービスを開始してからは、メディアにも取り上げられて多くの反響をいただいて、自分たちが作ったサービスは社会的に価値があるのだと改めて確信しました。
■人生を聞く その喜びと楽しさ
:早川
「親の雑誌」では親御さんのところに取材に行くわけですが、この取材がとにかく面白い。取材のたびに新たな感動があるし、2人として同じ人はいない。それと、同席のご家族も喜んでくださるんですよね。親御さんの話を一緒に聞いたり写真を見たりすると、ご家族の気持ちにも何かしら変化が起きる。取材に行けば行くほど、これは素晴らしいサービスだと思いました。今でも、これまでに取材を担当した何百人という親御さんの顔を思い出します。1人として忘れえない話がそこにありますね。
:井戸
親御さんの中には「本に残すような立派なことはしていない。人生を残すなんてとんでもない」と言う方もいらっしゃいますが、1人の人が生きてきた歴史、人生の歩みはそれぞれに面白いし価値があると取材のたびに感じます。それと、長く生きてこられた方たちの人生観も味わい深いんですよね。「人に助けてもらったから、自分も誰かを助けよう」とか、「自分はつらい思いをしたから、周りの人には優しくしよう」とか、苦悩、苦労の受け入れ方やその経験を踏まえたアウトプットが人それぞれで、そのどれもが勉強になる。
:早川
80年、90年生きてきたというのはだてじゃない。生きてきた積み重ねがすごいよね。「80歳なんですか、お元気ですね」という浅い理解ではなく、その年齢までの積み重ねを見聞きして、追体験できる。そして、その人生の積み重ねを子どもや孫に残していくことにも意義があると心から思うんですよ。「今のおじいちゃん」しか知らなかったお孫さんが、おじいちゃんの人生の歩みを知ることでおじいちゃんの見方が変わるかもしれない。「親の雑誌」の制作では、そんな醍醐味も感じます。
:井戸
「親の雑誌」では、写真を用意してもらったり、年表やプロフィールを作成いただいています。また、取材当日も表紙写真の撮影があるし、電話インタビューや原稿確認がある。完成まで手間がかかるのは事実ですが、雑誌作りの工程も楽しんでいただきたいと思っています。「準備のために何十年ぶりにアルバムを開いて、そこから親と昔話で盛り上がった。それ自体がかけがえのない時間になった。」なんて言っていただくことがあって、うれしいですね。取材だけでなく、制作前からのすべての体験を楽しんでいただけるよう、今後も工夫を重ねていくつもりです。
:早川
そこは発売以来こだわってきたところだね。申し込みから完成まで、そして完成した雑誌をご家族一緒に見ていただく、その一連の体験サービスを提供しているのが「親の雑誌」だと思ってます。取材後に、「本当にありがとう。こんなに話したのは人生で初めてだ」とか「今日はうまい酒が飲める」とか言ってもらうこともあって、取材だけでもこれだけ喜んでもらえるのが親の雑誌の価値であり、提供し続ける意味だと思います。
:井戸
僕たちの想像以上に、親の雑誌(自分史)を作ることで家族のコミュニケーションが増えているという実感がありますよね。完成した雑誌は、その後も折に触れて家族で見返していく、ずっと使えるものになります。家族それぞれに親の雑誌の内容がインプットされると、そこから出てくる親御さんへの対応や会話も変わってくるんでしょうね。親のためでもあるけれど、家族のためでもある。一方通行じゃないサービスになっているところがいいなと思っています。
■自分史作成サービス「親の雑誌」のこれから
:早川
「親の雑誌」を通じて、80年90年と生きてきたひとりひとりの人生そのものに価値があると確信できました。そして最近は、それらの価値が別のサービスになる可能性を秘めていると感じています。その1つが先日発売した「創業の雑誌」であり、「ロボット・スマートスピーカー・チャットボット向け会話シナリオ開発支援」だったりすると思います。私は今後こうした新サービスに軸足を移して、こころみが目指す「孤独をなくし、心がつながる」世界の実現に、少しずつでも近づいていきたい。その扉を開けたのが「親の雑誌」だし、今後も井戸編集長の手で多くの方に「親の雑誌」を広めてもらって、多くの方にこの価値を体験してほしいですね。
:井戸
早川さんから編集長を引き継いで今考えているのは、「親の雑誌」の価値をもっと多くの人たちに伝えたいということです。まだまだ表現方法はあると思うので、自分なりに見つけていきたいし育てていきたいです。将来的には、「親の雑誌(自分史)を作る」ことを文化にしたいんです。「ある程度の年齢になったら自分史作るよね」が当たり前になるくらいに育てていきたい。そのために何をするか、どうやって伝えていくかをいつも考えています。「親の雑誌」、自分史を作ることが当たり前になって、家族や大切な人たちとのコミュニケーションが豊かになる社会を作っていきたいですね。