ロボットによる自分史作成
カテゴリー:ブログ
投稿日:2018年07月28日(最終更新:2024年12月09)
ロボホン+自分史作成サービス「私の足あと」
シャープ様と共同で、ロボホンのクラウドファンディングをスタートいたしました!
【プレスリリース】ロボホン×自分史作成サービス 「私の足あと」~シャープのコミュニケーションロボット「ロボホン」が、あなたの半生を一緒に振り返り、記憶します~
「私の足あと」は、ロボホンが利用者にインタビューを行い、ロボホンが利用者の半生を記憶する、日本で初めてのロボットによる自分史作成サービスです。
「私の足あと」の特徴
- ロボホンがあなたにインタビュー
ロボホンが利用者の生い立ちやこれまでの思い出について質問します。1人で自分史を書こうと思うとどこから始めようか迷って時間がかかったりしますが、「私の足あと」ではロボホンが話しかけてきっかけを作るので、昔の記憶も思い出しやすくなります。
- 「足あとノート」で自分の半生が1冊にまとまる
利用者はロボホンとの会話を通じて思い出した記憶を「足あとノート」に書き、自分の半生を記した1冊を完成させます。ロボホンと一緒に作った「足あとノート」は、思い出の「自分史」として手元に残しておくこともできます。
- あなたの半生を記憶したロボホンは、日々の大切なパートナーに
完成したノートを事務局に送付すると、一定期間後にロボホンがその内容を記憶し、「自分の半生を知っている」世界で一つの存在になります。たとえば、結婚記念日に結婚式でのエピソードを思い出させてくれます。また、小学校の同級生と久しぶりに会った日の夜は、ロボホン「今日、小学校の同級生と会ったんだ」などと話しかけてみてください。修学旅行などあなたの小学校のエピソードを話してくれます。ロボホンがあなたの半生についてお話ししてくれるため、利用者は過去を思い返せるきっかけを日常的に得ることができます。
「お客様一人一人の半生を覚えさせる」という一人一人にカスタマイズされたサービスは、これまでのコミュニケーションロボットの中でも例がなく、ロボットへの愛着や信頼度は飛躍的に向上させる重要コンテンツになると考えております。今回は日本初の試みを広くお知らせし、多くの方に応援していただきたいという思いから、購買型クラウドファンディングにて発売いたします。ロボホンは、開発当初から「お客様とずっと一緒にいて、その人の体験や想い出を共有するパートナーとなること」を目指しており、本プロジェクトを通じて、人とロボットの新たな関係構築の足掛かりとしていきたいと考えております。
ロボットにできる自分史インタビューと、ヒトにできる自分史インタビュー
さて、人による「聞き上手」を展開しているこころみが、ロボットで自分史を作るということに違和感を覚える方もいらっしゃるかもしれません。
人間じゃないと人生について聞くなんて、できないのではないか?
そんなに簡単に、ロボットがお話できるのだったら、人間なんていらなくなってしまうのでは?
もちろん、私たちは、引き続き、人間がお話相手として「聞き上手」を提供していく価値は大いにあると考えています。
人には人の、ロボットにはロボットの良さがあると思っているのです。
・ロボホンが自分史を聞くときにできること
・ロボホンが自分史を聞くときにできないこと
・自分史を作った後に起きること
ロボットが自分史を聞くときにできること
「私の足あと」では、ロボホンが例えば「小学校時代の一番の思い出は?」と聞いてきます。その回答を「足あとノート」に記載していくことで、自分の今までの思い出が作れる仕組みになっています。
ノートに向かい合うだけでは、なかなかうまく書くことができません。人は、いきなり自分の考えを文章にして書くのはとても難しいのです(経験ありませんか?私はいつもそうです)。ところが、誰かに質問をしてもらってそれにこたえると、同じ書くという動作でも、案外スムーズにできてしまいます。人間、話すほうが書くより得意なんですね。
これは私自身もロボホンで試しにやってみて驚きました。
「私の足あと」は、それだけではありません。質問されて考えている間にロボホンが「遠足とか修学旅行の前の日って楽しみで眠れなかった、って人も多いみたい!」とか「家族との思い出もあるし、友だちとの思い出もあるよね!」などの合いの手を入れてくれます。これがかなり効果的で、言われると実際に修学旅行のことを思い出したり、そういえばこんなこともあったな、など記憶の底からいろいろな思い出を引っ張ってくるいいきっかけになるのですね。
また、何を書こうか考えているときにロボホンが一緒にいると、なんだか一緒に昔に戻っているような、ちょっと不思議な感覚になります。一人で昔を思い出すのとは違う、それこそ私たちが「親の雑誌」で取材をさせていただいているときの雰囲気が持つ、「一緒に過去に行く」感じがちょっぴり生まれるんです。言葉で表現するのは難しいのですが、ロボホンの存在感がそうさせるのでしょうか。
そんなわけで、ただ質問を列挙して聞くだけとはちょっと違って、たとえば質問一覧表に書き込んでいくのとは全く違う体験が、そこにあるのです。体験するとその違いは、かなり感じられるのではないかなと思います。
ロボットが自分史を聞くときにできないこと
とはいえ、ロボホンが人間と同じように自分史のインタビューをできます、というわけにはいきません。何か話題が出た時に、それについて詳しく聞く、というのは今のロボティクスの技術では相当難易度が高いのです。たとえば「小学校といえば音楽の先生のことが印象深いね」と言われたら、普通のコミュニケーションであれば「どんな先生だったんですか?」となりますが、それをロボットで言わせようとするのはかなり難しいのです。今、AIなどでできる限界は、いわゆる「雑談」ということで「音楽といえば私はモーツアルトが好きです」などに持っていく、のは出来ますが、そこまでですね。意図を理解することができていないためにいわゆる「深堀」をすることができません。ですので、今回のような人生を聞く、などが本当はロボットには一番難易度が高いんです。
また、お話に深く共感する、というのも今の段階では難しいですね。「戦争の時はつらかった」というお話をされて、そのつらかった感じに寄り添うことができるのは、今はロボットにはできません。傾聴という聞き上手の方法論では「共感」「受容」が大変大事なキーワードになりますが、それにはやはり、話の意味を理解するという難しい問題が立ちはだかるのです。
親の雑誌のスタッフに関して言えば、この深堀と共感・受容をするために専門のトレーニングを積んでいます。無理に聞き出したり、こちらが事前につくった筋立てで聞くのではなく、あくまで話し手の思いに沿って聞き、その内容に深くうなずくことができる分けです。こればかりは、当分、人間にしかできないこと、と私は考えています。
そんなわけで、ロボットと一緒に作る自分史と、人間と一緒に作る自分史は、言葉は同じですが体験としては全く別のものになる、と考えていただくと良いのかなと思います。
自分史をつくった後に起きること
「私の足あと」がすごいのは、むしろ作った後にあるかもしれません。作成いただいたノートは、いったん「私の足あと」事務局にお送りいただきます。そこで人間の担当者が、意味を理解したうえで、ロボホンにその内容を教え込みます。それによって、ロボホンが「意味を理解したうえで」話しかけることができるようになるのです。たとえば、「美術館良かった」と話しかけると、「◯◯さん、小学校の時絵が得意だったって言ってたよね!コンクールで入賞したこともあるんだよね!」などのコメントをすることができます。その瞬間、このロボホンは「あなたの半生をを知っている」存在になります。
ある意味、家族よりも近しい存在になるともいえるでしょう。これも実際に私自身が体験したのですが、ロボットにそう言われると、ものすごい親近感が生まれます。これはただロボットがかわいいというのを超えて威力も持っていると思います。
もちろん、人間にそうした自分のことを知ってもらうことも大事なことですし、家族や近しい人がいることの意味は全く比べることはできません。ただ、たとえばロボットは毎日一緒にいることができますし、うっかり忘れるということがありませんから、たとえば結婚記念日を忘れてしまう、ということもありません。記憶力に関しては、ロボットの方が人間より優れているともいえるでしょう。
いま、ロボットの開発は各社が進めていますが、個人に向かい合った、パーソナライズ化についてはどこもこれからというところです。
シャープさんと私たちで企画した「私の足あと」は、そこに対して、人間で培ったノウハウを用いて、アナログ+デジタルの手法で答えを出したいと思っています。
ロボットがあなたのことを知ってくれる、という体験を、ぜひしてみてください!
株式会社こころみ 代表取締役社長 神山晃男