自分史から見える「男性と子育て」の歴史的推移
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投稿日:2018年06月01日(最終更新:2024年12月09)
親の雑誌ご利用者様を対象にユーザー調査
こんな調査をしました。
【高齢男性の子育て参加に関する意識調査】
~高度経済成長を支えた80代以上の父、76.7%が子育てに不参加
子育てをしていなかったと語る方が多いのはある意味予想通りでしたし、うちもそうだった、という方も多いのではないでしょうか。
特に80代以上の方でその傾向が顕著、というのは感覚にもよく合います。
自分史で語られる昭和の時代そのもの
戦後からのいわゆる高度成長期真っただ中を働き、バブル期を体験、終焉前後に引退したのが80歳の方々。猛烈サラリーマン、専業主婦、ニュータウンといった昭和というキーワードから連想されるものを全て体験し、形作ってきた方々です。実際にお伺いする逸話も、毎日お酒を飲んでいた、休日はゴルフ三昧、趣味と言えば徹夜でマージャン、などなど・・・よく体がもつなあと、お話を伺って感心してしまうこともよくあります。
当時は、単身赴任も今より多かったのではとも思います。家を買うと単身赴任になるというジンクスのある大企業も、お話を聞くと結構あったりして。皆さん笑い話としてお話いただきますが、当時の家庭の中では深刻な問題だったのだろうなと感じます。
ですので、皆様お話を聞くと「子育てはかーちゃん任せ」「気が付いたら立派に育ってくれていた」「教育のことなんて何も考えていなかった」という方は、やはり多いです。専業主婦という仕組みもあって成立した、「仕事一筋」だったのだなあと改めて感じます。
自分史インタビューからわかる、「本当は寂しい」「親心」
さて、そんな仕事一筋、子育てには無関心のサラリーマンの皆さまは、自分の仕事に誇りを持ち少しも後悔していない・・・となるかと思いきや、実はそうでもない。
仕事に誇りを持っているのは間違いありません。今の日本を作ってきた中核の世代ですから。あの橋は、あの車は、あの事業は俺が作ったというリアルなお話を伺うと、率直にすごい、と思いますし、憧れます。一方で、子育てにかかわれなかったことを悔やんでいるかたも、非常に多い。実は当時から、本当は子どもと遊ぶ時間や、一緒にいる時間を欲していたようなのです。
ただ、当時はそういう時代ではなかった。「一人前のサラリーマンが子育てなどしては恥ずかしい」という雰囲気もあったのかなあと感じます。世間体的に子育てをするのがのぞましくない、あるいは子育てに積極的なのは並の男じゃないぞという雰囲気でしょうか。そんな雰囲気にのまれて、なんとなくゴルフやマージャン、酒の席を優先しているうちに、気づけば子育ての時期が終わっていた・・・そんな方も多かったのだろうと思います。
自分史インタビューでお話される旅行などの思い出
ですので、皆様、数少ない旅行などは印象に残っているようです。ちょっとした2泊3日の旅行などがすごくいい思い出になっていたり、当時の面白いエピソードをお話してくださったり。仕事のことを生き生きとお話するのとはまた違う表情で、ご家族のことをお話くださいます。人間、やはり家族との思いでは、大事なんだな、誰にとっても価値があるんだなと強く思います。
イクジジは昔できなかった子育ての追体験
多くの方がおっしゃることで、「息子は俺と違って、だいぶ子育てや家のことをやっているようだ」というものがあります。でも、そんな息子さんに否定的でもっと仕事に打ち込めばいいという方は、いません。「息子は偉い」「そういうのは大事だと思う」と皆さんおっしゃいます。このあたりにも、ご自身が子育てに関与したかったという気持ちが入っているように思います。
今は、孫育てに積極的にかかわる「イクジジ」も多くいらっしゃいます。おむつを初めて替えたという方もいらっしゃいますし、インタビュー中にお孫さんが来ると突然表情が柔和になる方もいらっしゃいます。みんな小さい子どもは好きなんだな、と感じる瞬間です。
「子どもが好き」に男女差はない
そうした光景を見ていると、小さい子どもや赤ちゃんを好きだと思う気持ち、子どもや孫と一緒に過ごしたいという気持ちに男女差はないなと思います。ただ、当時は役割が違ったため、男性は子育てに「参加できない雰囲気」があったのではないか。今は男性の子育てが当たり前になりつつあり、それはきっと男性にとっても、いいことなのだろう、としみじみと思わされます。
今後は、もう過去のように「男は家を顧みず仕事一筋でいきるべき」という時代にはならないと思います。(もちろん、常に一部の例外はいると思いますし、そうした方の生き方を否定したいとは全く思いませんが)
だからこそ、そんな時代を生きた方々の気持ちや言葉を、すこしでも多く残しておきたい、と考えています。
株式会社こころみ社長 神山晃男