親の雑誌ブログ

ひな人形でつなぐ親子4世代の愛/自分史制作こぼれ話

桃の節句が終わり、梅や桜が花開く季節となりました。女の子のいるご家庭では、今年もひな人形を出してお祝いされたでしょうか。今回は編集長・井戸が3月になると思い出すという、あるご家族のひな人形にまつわるお話です。

梅の花

古希の娘から卒寿の母へ、自分史作成をプレゼント

自分史作成サービス「親の雑誌」では、お申し込みから取材日程の調整、写真の選定や原稿確認と、自分史の完成までをコンシェルジュがお手伝いします。「聞くことのプロ」として、お申込者や親御様はもとより制作に関わるご家族みなさまの心の声に耳を傾けながら、「親の雑誌」を作るという体験を楽しんでいただきたいと日々願っています。

お客様とお話をしていると、「親の雑誌」には載らない素敵なお話を聞く機会も多くあります。今回は、ひな祭りにまつわる親子4代(ひいおばあさん、おばあさん、お母さん、娘さん)のお話をご紹介したいと思います。※プライバシーに配慮し、お聞きしたお話を基にしてエピソードを構成しています。

このお話に登場するのは、3人の女性です。「親の雑誌」を作るてる江さん。お子様の立場で、母・てる江さんの自分史を作るべく「親の雑誌」を申し込まれた久子さん。久子さんの長男のお嫁さんである美紀子さん。「親の雑誌」は、てる江さんが90歳、久子さんが70歳を迎えた年に、古希の娘から卒寿の母へのプレゼントとしてお申し込みくださいました。

久子さんは地域のボランティア活動で日々お忙しいこともあり、取材の日程調整などは美紀子さんとメールのやり取りをして進めました。取材も、「日当たりが良くて写真写りが良さそうだから」とのことで、美紀子さんご一家のお住まいで行うことに。取材当日、美紀子さんのお宅にうかがうと、てる江さん、久子さん、美紀子さん、そして1歳になったばかりの美紀子さんの娘さんが出迎えてくださいました。

取材は順調に進み、和やかなムードの中でてる江さんの素敵な笑顔もカメラに収めることができました。「親の雑誌」に載せる過去のお写真や、てる江さんの趣味である日本画の作品の撮影も終えたとき、隣の部屋におひなさまが飾ってあることに気づきました。ちょうどお茶を出してくだった美紀子さんに「素敵なおひなさまですね」と話しかけると、美紀子さんは「このひな人形は、義理の母が買ってくれたんです。買ってもらったときのことが、とても思い出深くて……」と話し始めました。

ひな人形

思い出に愛を添えて、初孫に贈るひな人形

美紀子さんは結婚前にご両親を亡くされており、久子さんご夫妻を実の両親のように思っているとのこと。1年前に美紀子さん夫婦に赤ちゃんが生まれたときも、久子さんがサポートしてくれたそうです。あるとき久子さんが、遠慮がちに美紀子さんに切り出しました。「女の子が生まれたときのひな人形は女親の実家が用意するものだと聞いているのだけど、よかったら私たちから贈らせてくれないかしら?」。すでに両親のいない美紀子さんは、久子さんの心遣いがうれしく、喜んで久子さんの気持ちを受けることにしました。

ひな人形は、久子さんと美紀子さん家族で選びに行きました。お店にはたくさんのひな人形が展示されています。おのおのが見て回り、気に入ったものの中から選ぼうということになり、美紀子さんも店内を見て回りました。そんな美紀子さんの目に、あるひな人形がとまりました。落ち着いた色合いの衣装を身に着けたお内裏様とおひなさま。穏やかな人形の表情にも心ひかれましたが、値札を見ると美紀子さんが思っていた予算よりも数万円高かったので、「これは見送ろう」と思ってその場を離れた美紀子さん。

ひと通り見て久子さんと合流すると、「私、気に入ったおひなさまがあったの。美紀子さんお好みとは違うかもしれないけど、見るだけ見てくれる?」と久子さん。なんとそれは、美紀子さんが気に入りながらもあきらめようと思ったひな人形でした。そのことを久子さんに告げると、「2人同じものを気に入ったのなら、これにしましょうよ。予算は気にしないでいいから」と言って、久子さんと美紀子さんが一目ぼれしたひな人形が美紀子さんに家にやってきました。

ひな人形を飾り、久子さん夫婦も招いて初節句のお祝いをしたときのこと。久子さんはひな人形を見ながら思い出を語り始めました。「私が子どものころ、家が貧しくてひな人形なんて買ってもらえなくてね。私も欲しいとは言えなくて、ひな祭りの時期は家にあるぬいぐるみやこけしを集めてきてそれらしく並べていたの。自分に子どもが生まれたらおひなさまを買おうと心に決めていたのに、生まれてきたのは2人とも男の子。だから、女の子の孫が生まれて本当にうれしかった。私にとっても生まれて初めてのひな人形なのよ」。この言葉を聞いて、美紀子さんはこのひな人形がいっそう大切に思えて、そして自分の娘にもこの話を伝えようと思ったそうです。

自分史作成で初めて知った、母の愛の深さ

ひな人形

「親の雑誌」の取材で、てる江さんはお寺の奥さんとして日々忙しくされていたとお聞きしていました。田舎のお寺で檀家さんの数も多くはなく、生活が苦しい時期もあったと話しておられました。お話の中でてる江さんは、「娘(久子さん)を嫁に出したときのことが忘れられません。お寺の修理にお金がかかって、久子には着物を満足に持たせてやれなかった。そのことが今も心残りなんです」と言っておられました。

そばで聞いていた久子さんは、取材後に「母があんなことを思っていたなんて知りませんでした。私は気にしていなかったのに。母が私のことを大切に思っていてくれたことを改めて知ることができました」とおっしゃっていました。

娘を思うてる江さんの母の愛、お嫁さんやお孫さんに注ぐ久子さんの思いやり、その気持ちを受け取り娘さんにつなごうとする美紀子さん。優しい表情のひな人形を見ながら素敵なお話を聞かせていただき、とても幸せな気持ちで帰路につきました。

その後、てる江さんの「親の雑誌」は無事に完成し、卒寿のお祝いの席で雑誌をお披露目されたそうです。表紙に使った顔写真のてる江さんの笑顔がとてもいいと親戚のみなさんにも好評だったと美紀子さんからお知らせいただきました。

このように、自分史作成を通じて世代を超えたご親族のつながりにふれさせていただける機会があり、とても幸せな仕事だと思っています。これからも、このような素敵な場面に出会いながら、ご家族の歴史と思い出をつなぐお手伝いをしていきたいです。

親の雑誌編集長 井戸洋希

自分史編集長井戸の写真

投稿日:2019年03月06日